しっぽもひと役のレリーフ


 玄関ロビーに「長崎の鐘」「旧校舎」「しっぽもひと役」などのレリーフがあります。その中の「しっぽもひと役」って何だろうと思った方も多いのではありませんか。
 そういえば、本校の先生たちのおそろいのポロシャツの背中にもこの言葉があります。 さて、これは一体何なのでしょうか。

      
玄関ロビーの壁面にあるレリーフです。ぶたの絵と「しっぽもひと役」の文字が・・・。
先生たちのポロシャツです。背中にしっかりと「しっぽもひと役」と書かれてあります。
       

 この「しっぽもひと役」は、自らも重傷を負いながら、被爆した多くの人々の救助活動に奔走した故永井隆博士の言葉です。
  「長崎の鐘」「この子を残して」など数多くの本の著者としても知られる永井博士は生前、この言葉をよく色紙などに残しておられました。 
 この「しっぽもひと役」の由来について、永井博士の娘である筒井茅乃さんは次のように書いておられます。
   

      しっぽもひと役


 ある日のことでした。 
 小学生だった私は如己堂で寝ている父のそばで、いつものように遊んでいました。父は墨で小さな絵を描いていました。
 外の道を通る人もなく、静かなひとときでした。
 「かやちゃん、これはどうね。」
 と、父はやさしい浦上ことばでいいました。
 見ると、それは一匹のぶたの絵でした。 そのぶたはお尻がまあるく、つるつるしているようで、なんともおかしな絵でした。
 「おかしかー。」
 私はそういってクスクス笑いました。描かれたぶたも、まるで照れるように笑っていました。父も笑っている私をうれしそうに見て、
 「おかしかやろう。」
 と、いうと、ぶたの丸いお尻のところにクルリと一ねじりした線を描き入れました。
 「ほら、これでどうね。」
 「うん、今度は良か。」
 ひと筆のしっぽを描いてもらったぶたは、不思議なことに、一匹の楽しそうなぶたに変わっていました。父はさらに、
 「しっぽもひと役」
 と、ぶたの上の余白に書き入れました。それを、なんだろうと見ている私に、
 「しっぽもひと役。ぶたのしっぽだってね、なかったら、おかしいだろう。何の役にもたっていないように見えるしっぽでも、本当はとても役にたっている、なくてはならないものなんだよ。」
 と、やさしく説明してくれました。
 私の思い出の中の「しっぽもひと役」の由来はこのような次第です。

                                                                      1988年12月

 どうです?「しっぽもひと役」の由来が分かりましたか。永井博士と山里小学校は深いつながりがあったので、この言葉が新校舎のレリーフに使われることになりました。
 筒井茅乃さんは山里小学校の卒業生で、後に「娘よ、ここが長崎です」などの本を著しました。2008年、66歳で逝去されています。
 ちなみに、永井博士の故郷の島根県には、博士の言葉をもとにした、その名も「しっぽもひと役」という有名なお菓子があります。
     
       
筒井茅乃さんの 「娘よ、ここが長崎です」 島根県のお菓子。その名も「しっぽもひと役」